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AirPods Max レビュー | 原音忠実な音質に驚愕。長時間でも疲れない装着感が高い没入感を実現する

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2020年12月、Appleのワイヤレスオーディオブランド 「AirPods」 ファミリーに、待望のワイヤレスヘッドホン 「AirPods Max」 が追加された。

AirPods Maxは、Appleが自社ブランドから発売するはじめてのワイヤレスヘッドホン。AirPods/AirPods Proと同様、Apple製品とのスムーズなペアリングが可能で、アクティブノイズキャンセリングや空間オーディオに対応しているほか、どんなユーザーにもフィットするデザイン、原音に忠実なサウンドなどが大きな特徴となっている。

国内での販売価格はなんと67,980円(税込)。SONYやBoseの最新ノイズキャンセリングヘッドホンに比べて1.5倍もしくはそれ以上の価格ということで、多くのユーザーが驚いたことだろう。

果たして同ヘッドホンの実力は、その価格に見合うものなのだろうか。発売日当日に実機をゲットすることができたので、丸2日間かけてじっくり検証した内容をレビューとしてお届けする。実際に購入するとなるとそれなりに高い買い物になるため、購入検討中の方は本レビューを読んで吟味していただきたい。

AirPods Maxのデザインをチェック

上記写真が今回入手したAirPods Max。筆者が購入したのはスペースグレイモデルで、AirPods Maxにはこのほかにシルバー・スカイブルー・ピンク・グリーンが用意されていて、全部で5種類のカラーラインナップが用意されている。

カラーの好みは人それぞれだとは思うが、個人的には今回はスペースグレイが当たりだと思っている。他カラーも並べて比較してみたが、スペースグレイは見た目から “プロ感” が漂っており、チープさがないのがグッド。

早速デザインについて触れていく。AirPods Maxはこれまで筆者が見てきたヘッドホンの中でも、かなり独特なデザインを採用している。

金属質な大きな楕円のイヤーカップと、頭頂部にあてがわれるU字谷型ニットメッシュキャノピー、そしてそれらを繋ぐステンレススチールのアーム。カッコいいかどうかの評価はとりあえず置いておくとして、このヘッドホンは実に個性的だ。

まず目を引くのは、鈍い光を放つイヤーカップ。ここには酸化皮膜処理されたアルミニウムが採用されていて、マットな仕上がりながらも金属らしい光沢感がある。どこかの音楽スタジオで使われていても違和感がないくらいのスタイリッシュな仕上がりだ。

凹凸がなくコロンと丸いイヤーカップからは可愛らしさも感じられるため、スタイリッシュさと可愛らしさの両方が共存した、不思議なデザインとも言えるかもしれない。

硬石の上に誤ってカツンと置いたらイヤーカップに傷が……

ただ少し気になるのは、イヤーカップの素材的に何か尖ったもので引っ掻いたり、硬いものとぶつけると簡単に傷がついてしまうということ。特にデスクなどに置きっぱなしにするクセがある方は注意が必要だ。長く使うことを想定しているなら、頻繁にケースに収納するなど意識して大事に使っていくしかない。

イヤーカップの側面にはアクティブ・ノイズキャンセリング(ANC)やハンズフリー用マイクのための穴(スリット)が開けられている。また右底面には充電用のLightningケーブル……USB Type-CではなくLightningだ。ちなみに、3.5mmイヤホンジャックは搭載されていない。

ヘッドバンドはステンレススチール製。細く見えるが耐久力は十分。ステンレススチールが露出しているのはイヤーカップとの接続部分とアームの伸縮部分のみで、そのほかの部分はツルツルとしたシリコン素材のカバーで包まれているため、細かい擦り傷などで見た目が悪くなってしまうことはほとんどないだろう。

アームはスルスルと静かに伸縮するタイプ

アームは学校の先生がよく持っている指示棒のように伸縮させることが可能で、イヤーカップは外側にグッと引っ張ることで20°くらい開ける構造になっている。ヘッドバンドもかなり広がることもあり、多くのユーザーの頭にジャストフィットしてくれるはずだ。

AirPods Maxでもっとも目を引くのが、北欧のU字谷(氷河地形)を彷彿とさせる内側に丸みを帯びたヘッドバンドのキャノピー部分。頭頂部への負担にかかわる大事な部分なので各社工夫を凝らし様々な素材が用いられるが、Appleが採用したのはなんとニットメッシュ素材。

公式画像を見るだけではあまり柔らかそうに見えないかもしれないが、実際につけてみるとあら不思議。ふんわりと柔らかい素材が頭頂部を包み込んでくれる。

キャノピー部分が広くなっているため圧力も分散しやすく、頭頂部への負担はかなり軽減されている。長時間つけていても痛くならない。しかもメッシュ素材ということで、真夏の暑いときに蒸れにくいのもグッドだ。

ただしメッシュという特性上、何かにひっかけたりしたらすぐに破れてしまいそうな危うさはある。持ち運び用のソフトケースもキャノピー部分の保護はしてくれないため、そこは注意が必要となりそうだ。

ユーザーの耳元とヘッドホンの間の緩衝材となるイヤークッションは、通気性のある形状記憶フォームのファブリック生地が使用されている。

一般的なヘッドホンであれば人工皮革などを使用して高級感を醸し出すところだが、AirPods Maxは見た目よりも付け心地を重視した。スポンジのように柔らかく、指で押すと深く沈み込み、離すとゆっくり元に戻っていく。実際に頭に装着するとユーザーの頭にもっちりと吸い付くよう。また熱や湿気が籠らないのも重要なポイント。長時間つけることを考慮してのファブリック素材だろう。まさに究極のつけ心地だ。

イヤーパッドは、ヘッドホン本体にマグネットでくっついているだけなので簡単に取り外し可能。非力な筆者でも片手でポンと取り外すことができた。取り付けるときはマグネットの磁力によって吸い寄せられるように吸着するため、うまくはまらずに四苦八苦することはないはず。もしヘタってきたり汚れてしまったら、新しいものを購入して付け替えればOK。高価な本体ごと買い替える必要はない。

AirPods Max本体の操作は、右側のイヤーカップ上部にあるDigital Crownとノイズコントロールボタンで行う。

Digital CrownはApple Watchでお馴染みのパーツ。クルクルと回すように操作することで音量調節が可能。押し込むことで楽曲の再生・一時停止、電話への応答・終了、Siriの起動ができるようになっている。クルクルと回すとヘッドホンの中で小さな音で 「カリカリ……」 とダイヤルを回す音が小さく聞こえるのもAppleのちょっとした遊び心。

ノイズコントロールボタンではアクティブノイズキャンセリングと外部音取り込みモードの切り替えが可能だ。

機能 操作方法
ペアリングモードにする ノイズコントロールボタンを長押し
アクティブノイズキャンセリング/外部音取り込みモードの切り替え ノイズコントロールボタンを1回押し
音量を上げる/下げる Digital Crownを回す
Siriの呼び出し Digital Crownを長押し
オーディオの再生/一時停止 Digital Crownを1回押し
オーディオの早送り Digital Crownを2回押し
オーディオの巻き戻し Digital Crownを3回押し
通話に出る/通話を切る Digital Crownを1回押し
着信拒否 Digital Crownを2回押し
2件目の電話に出て最初の電話を保留にする Digital Crownを1回押し
2件目の電話に出て最初の電話を切る Digital Crownを2回押し
2件目の電話を着信拒否 Digital Crownを長押し
ヘッドホンからの音声出力を停止して電話本体で通話する Digital Crownを2回押し

有線接続

先ほどもご紹介したとおり、AirPods Maxには外部ポートがLightningポートしか用意されておらず、飛行機などのオーディオシステムに3.5mmオーディオケーブルを利用して有線接続をすることができなくなっている。

ただし、Apple公式サイトで販売されているLightning – 3.5mmオーディオケーブルを購入することでLightningポートを使って有線接続をすることができる。同ケーブルは1本4,180円(税込)とケーブル一本の価格としてはやや高価だが、かつてiPhoneに付属してきたLightningを3.5mmイヤホンジャックに変換するアダプタやサードパーティのLightning to 3.5mmオーディオケーブルを代用することはできなかったため、有線で接続したい方や飛行機などで活用したい方はぜひ購入しておこう。

ちなみにLightning – 3.5mmオーディオケーブルで有線で接続したとしても、AirPods Maxで音楽を聴くには内蔵バッテリーに電力が残っている必要があることにも注意が必要だ。

収納・持ち運び

個人的に不満があるのはキャリングケース。その形状について揶揄されているようだが、筆者にとって大きいのは形状云々ではなく、ヘッドホン全体をキャリングケースで保護できないこと。実際にキャリングケースに入れた写真は以下。

見てのとおり、AirPods Maxのイヤーカップはすべて覆うことができるものの、ヘッドバンドとキャノピー部分はモロ見え。カバンに入れて持ち運ぶのがやや難しいため旅行や出張など荷物が多いときに邪魔にならないかが心配だ。後述するが、ノイズキャンセリング機能や音質が高いこともあって、持ち運びしづらいのは個人的にはとても惜しく感じている。

他のヘッドホンのケースと比較

AirPods Maxのデザイン・外観はこんな感じだ。製品デザインについての評価は賛否あるようだが、筆者は個人的にはそれなりに気に入っている。高級感があるスペースグレイモデルを選んだこともあってチープさは感じられずファッションアイテムとしても十分成立する上に、使っているうちにそのデザインのほぼ全てが使いやすさのためのものと納得できる。

フィット感

デザインについてひと通り紹介できたところで、AirPods Maxの総合的なつけ心地についても言及しておきたい。

AirPods Maxは 「オーバーイヤー型」 と呼ばれる形状のヘッドホンだ。「オーバーイヤー型」 はイヤーパッドが耳をすっぽりと覆うため、長時間つけても耳が痛くならないのが特徴だが、AirPods Maxの場合は “Appleの様々な工夫” のおかげで一般的なオーバーイヤー型ヘッドホンよりもさらにワンランク上の快適さが実現されている。

特に個人的に高く評価したいのはイヤーカップ。SONYのオーバーイヤー型ヘッドホン 「WH-1000XM4」 のように耳やピアスがイヤーカップ内側に当たることがないくらい広くて深いため、耳が疲れることはない。

イヤーパッドに通気性のあるメッシュを使用し、蒸れにくいのもポイント。検証が冬の寒い時期なので夏の暑い時期でどうなるかは分からないが、暖房で24℃まで温められた部屋の中で3時間連続で使ってみた中では不快感はなかった。

AirPods Maxの重量が他ヘッドホンに比べて重い(384.8グラム)ことを気にしているユーザーがいると思うのだが、それは心配ご無用。ヘッドバンド上の広いキャノピーが頭頂部にかかる力を面で分散してくれていて、長時間の装着を快適にしてくれている。前述の 「WH-1000XM4」 やBoseの 「Noise Cancelling Headphones 700」 は数時間頭に乗せていると頭頂部が痛くなってくることがあった。しかし、AirPods Maxは重量の割に痛みを感じることはなくずっとつけていられる。

また、ヘッドホンを装着する上で頭を動かしたときのヘッドホンのズレが気になる方もいると思うのだが、AirPods Maxは程よい締め付け具合になっていて、多少激しく動いてもヘッドホンがずれることはほとんどない。筆者はこれまでの人生でたくさんのヘッドホンに触れてきたが、AirPods Maxはその中でも確実に5本指に入るレベルのつけ心地だったと感じている。

ペアリング・Apple製品との連携

AirPods MaxをiPhoneやiPadとペアリングするのはとても簡単。はじめて設定するときには、AirPods MaxとペアリングしたいiPhone/iPadを近づけるだけで画面に自動で設定アニメーションが表示され、あとは画面の指示に従って数回画面をタップするだけでペアリングが完了する。

もしアニメーションが表示されないなら、AirPods Maxのステータスランプが白色で点滅するまでノイズコントロールボタンを長押しすれば良いはずだ。

一度ペアリングが完了すれば、同じiCloudアカウントでサインインしているすべてのデバイスでAirPods Maxが自動で設定される。もしiPhoneとiPad、Macを持っているのなら、iPhoneで一度ペアリングしてしまえば、今後はiPadとMacにも瞬時に切り替えられるようになる。

たとえば、iPadでドラマを視聴しているときにiPhoneに電話がかかってきて出ようとすると、AirPods Maxが自動的にiPadからiPhoneに音声を自動で切り替えてくれる。とてもスマートだ。

上記のiCloudアカウントを利用した自動設定はAirPods ProやBeatsのヘッドホンなどでも利用することができ、それらのデバイスを使っていてもデバイスを切り替えることはできるのだが、AirPods Maxの方がデバイスの切り替えはスムーズにできる印象だった。

音質について

Appleは 「AirPods Max」 の音質について、独自設計した40mm口径のダイナミックドライバによって、深みのある豊かな低音域、正確な中音域、明瞭で透き通った高音域の伸びを実現していると謳っている。

この文言と7万円弱という価格設定から、Appleは音質に相当自信があるんだろうなとワクワクしながらも、内心は半信半疑の気持ちを持ちながらAirPods Maxで音楽を聴いてみた。しかし、筆者の期待は良い意味で裏切られた。想像していたものよりもずっと高いクオリティのサウンドに仕上がっていたからだ。特に、Apple Digital Master楽曲を聴くとその凄さがわかる。

AirPods Maxの音を一言で表すなら “クセの無い素直なニュートラル” 。高音から低音、大きな音から小さな音までひとつの音も潰れることなく鮮明に表現されていて、音の解像度は非常に高い。Appleの言う 「原音に忠実なサウンド」 は確かに実現できていると言えるだろう。ボーカルや奏者の息遣い、ギターやバイオリンなどの弦楽器の弦の振動までもが目の前で演奏されているかのようにリアルに伝わってくる。

さらに筆者が驚いたのは、音が鳴っている場所が両耳付近ではなく自分の周囲なのではないかと錯覚してしまうほど音場が広いこと。ライブ音源との相性は抜群だ。

また、ひとつひとつの音の伸びがとても良いのも大きな特徴だ。前方近くで鳴ったハイハットの音が耳の後ろまでスーッと伸びて消える。鳴り終わった音の処理もとても丁寧で、雑さを感じることは一切ない。

中には7万円の価値はないと一刀両断しているレビューもあるかもしれないが、筆者の評価はその真逆。正直なところ最初は懐疑心もあった。オーディオを得意とするBoseやSonyのヘッドホンを超えることはAppleと言えども容易いことではないと思っていたからだ。

しかし、AirPods Maxのそれは 「WH-1000XM4」 以上の高い再現度を持った製品だった。もちろん、「音」 には人それぞれ好き嫌いがあるものだとは思うが、少なくとも音の解像度という点では 「WH-1000XM4」 や 「Noise Cancelling Headphones 700」 は上回っていると言える。

ちなみに、AirPods Maxにはノイズキャンセリングモードと外部音取り込みモードなど複数のモードが存在するが、実はどれでもほぼ同じクオリティで音楽を楽しむことが可能。どんな環境だろうと同じ音を提供できるAirPods Maxの高品位な音質調整が一体どのように行われているかは分からないが、これこそがAirPods Maxに搭載された2つのH1チップによる恩恵である可能性がありそうだ。

AirPods Maxの音質で残念な点を強いて挙げるなら、これぞAirPods Maxの音!と言える個性的な特徴 (クセ) があまりないこと。正確で透明感のある音質を持ち味とするが、最初つけたときはそのクセのなさに一瞬といえどもやや物足りなさを感じたのも事実。

とはいえ正直これほどの高いクオリティのサウンドを実現しているなら、ここはあまり深く考えなくても良いのではないだろうか。むしろ筆者のようにたくさんのジャンルの楽曲を聴く方なら、楽曲に合わせてヘッドホンを替えずともすべてAirPods Maxだけで事足りるため、むしろ強みとも言えるかもしれない。

ちなみに、AirPods Maxは音漏れをそこそこ防いでくれているが、iPhoneの音量70%くらいで音を聴くとそれなりに音漏れが発生する。電車などノイズが多い場所であれば問題ないことを確認したが、図書館など静かな環境で利用する場合はすこし音を控えめにすると周囲の人に不快感を与えずに済むはずだ。

ノイズキャンセリング性能

AirPods Maxには、周囲のノイズを消して音楽に集中しやすくするノイズキャンセリング機能が搭載されている。

ノイズキャンセリングには、イヤーパッドやヘッドホンの形状によってノイズを物理的に遮断する 「パッシブノイズキャンセリング」 と、マイクで周囲の音を拾い、その音を打ち消す逆位相を発生させることでノイズを低減させる 「アクティブノイズキャンセリング(ANC)」 の2種類が存在するが、AirPods Maxはこの2つの方式によって静かなリスニング環境を作り出している。

まずはパッシブノイズキャンセリングについて。AirPods Maxのイヤークッションはかなり優秀で、耳元にしっかりとフィットし密閉度を高めることで、外部からの音を聞こえづらくしている。

実際にパッシブノイズキャンセリングだけ(アクティブノイズキャンセリングをオフにした状態)でも外部の音をそれなりに遮断していて、同じ部屋の中で音楽を流していてもどこか遠くで流れているように感じられた。

そこでさらに究極の静けさを手に入れるために活躍してくれるのが 「アクティブノイズキャンセリング」 だ。AirPods Maxは3個の外向きマイクで周囲のノイズを検知しつつ、イヤーカップ内部に組み込まれた1個のマイクがユーザーの耳に届いている音を測定し、ノイズを効果的に除去する。

アクティブノイズキャンセリングをオンにすると、途端に周囲の音が遠くに行ってしまったかのような静けさに。アクティブノイズキャンセリング機能を持つヘッドホンの中には、機能をオンにするとサーッとホワイトノイズが聞こえて耳がムズムズするものもあるが、AirPods Maxの場合はこの点は問題なしだ。

ただし、肝心のノイズの除去性能は他社ヘッドホンに比べてズバ抜けて良いとは言えないようだ。と言うのも、AirPods Maxのアクティブノイズキャンセリングは確かに正確で、エアコンの動作音や街やカフェの喧騒などはしっかり消してくれることが多い。ただし、耳を澄ませば微かにノイズは聞こえてくるし、電車内で使えば電車の走行音などは意外と聞こえてくる。この点、SONYのWH-1000XM4はうまく消せていたりする (それでも音は聞こえてくるが) 。ヘッドホンごとに得意不得意があるようだが、それはAirPods Maxも例外ではないようだ。

とはいえ、実際は音を消すことではなく音楽を再生することがヘッドホンの本当の役目。音楽をかけてしまえばAirPods MaxもWH-1000XM4もBoseのNoise Cancelling Headphones 700も周囲の音は聞こえなくなる。ノイズキャンセリングのためだけにAirPods Maxを購入するという方は少ないと思うので、ここは純粋にノイズキャンセリングの性能だけを比較した結果として捉えていただければと思う。

外部音取り込みモード

AirPods Maxには 「外部音取り込みモード」 というモードが用意されている。これはヘッドホンを装着している状態でも、周囲の音をハッキリと聞くことができる便利機能だ。

内蔵されたマイクで周囲の音を拾い、それをイヤーカップで再生することで実現している。同機能があればヘッドホンをつけた状態でも電車のアナウンスを聞いたり、コンビニでヘッドホンを外すことなく店員とやり取りすることが可能だ。

AirPods Maxの外部音取り込みモードは極めて優秀だ。自分の声だけでなく、周囲の音がかなり鮮明に聞こえるようになる。目の前のHomePodから流れている音楽をそのまま自分の耳で聴いているのと同じような感覚を味わえる、と言えばAirPods Maxの外部音取り込みモードがどれほどすごいのかお分かりいただけるのではないだろうか。AirPods Maxに搭載されたマイクが優秀だからこそ実現できたエクスペリエンスだ。

AirPods Maxで外部音取り込みモードをオンにするには、右のイヤーカップ上部にあるノイズコントロールボタンを1回押すだけ。もし音楽の再生も同時に止めたいなら、隣のDigital Crownも1回押せばOKだ。慣れてきたら2本指で両方のボタンを同時押しすることもできるが、コンビニのレジ直前でやろうとすると慌てて失敗してしまいがち(筆者だけ?)なので、自宅で何度か練習してから実行するようにしよう。

空間オーディオ

AirPods Maxの魅力的な特徴として、「空間オーディオ (Spatial Audio)」 がある。

「空間オーディオ」 は、iOS 14からAirPods Proで利用できるようになった3Dオーディオ機能。従来のステレオサウンドとは異なり、前後左右から音が聞こえるなど音の出る位置が正確になり、まるで映画館で映画を見ているかのような高度な没入感を得ることができる。これがAirPods Maxでも味わえる。

実際に試してみる。Apple TV+で配信されている作品『グレイハウンド』をiPad Proで再生してみた。すると、AirPods Maxで再生される音声はiPadの画面を正面に立体的に襲いかかってくる。潜水艦のスクリュー音が横を掠めて行ったり、魚雷の爆発音などがあちこちから聞こえてきたりと大迫力の音響体験を楽しめた。AirPods Proをお持ちの方なら一度味わったことがあるのではないかと思うのだが、まだ試したことがない方はそのクオリティの高さにビックリするとおもう。

ただし残念なことにこの空間オーディオ機能は現時点ではApple TV+で配信されているDolby Atmos対応コンテンツなどでしか利用できないだけでなく、iPhoneやiPadでしか利用できない。Macなど大画面で利用できるようになるとさらに魅力度を増すと思うのだが。利用できるコンテンツが徐々に増えていることもあり、早く利用できるようになることを願うばかりだ。

バッテリー持ち

Apple公式サイトの技術仕様によると、AirPods Maxはアクティブノイズキャンセリングまたは外部音取り込みモードの状態で最大20時間の再生が可能だという。

これを検証すべく、アクティブノイズキャンセリング状態でAirPods Maxを使い続けてみたところ、実際のバッテリー持ちは以下のとおりとなった。

経過時間 バッテリー残量
0時間 100%
1時間 95%
2時間 91%
3時間 86%
4時間 82%
5時間 76%
6時間 71%
7時間 65%

計測の結果、AirPods Maxは1時間に約5%ずつバッテリーを消費していて、おおよそ技術仕様どおり20時間のバッテリー持ちを実現していることがわかった。ちなみに、BoseのNoise Cancelling Headphones 700は同じ20時間、WH-1000XM4はさらに10時間長い約30時間のバッテリー持ちとなっている。

毎日充電できないなどの特殊な状況を考慮するならバッテリー持ちが長いヘッドホンを選ぶべきかもしれないが、正直20時間も連続で音楽を聴き続ける機会はなかなかなく、途中でバッテリーを充電できる機会もあるとは思うため、バッテリー持ちについてはあまり深く考える必要はないと言えるだろう。

ちなみに、AirPods Maxにはクイック充電機能が設けられていて、5分間の充電で約1.5時間動作させることができるくらいのバッテリーを回復させることができる。もし寝る前にバッテリー充電を忘れてしまった場合にも、家を出る直前まで充電をしておけば、通勤・通学時間分くらいは音楽を聴くことができるのではないだろうか。

また、AirPods Maxは一般的なワイヤレスヘッドホンと違って、電源オフという概念がなく、代わりに本体を低電力モード/超低電力モードにしてバッテリー消費を限りなく少なくするという方法をとっている。

Appleが公開したサポートページによると、AirPods Maxが低電力モードになったり、超低電力モードになる条件は以下のとおり。

キャリングケースの外でAirPods Maxを放置
①5分経過で低電力モードに移行
②72時間経過でBluetoothと探す機能がオフになり、さらなる“低電力モード”に

キャリングケースの中にAirPods Maxを収納
①収納と同時に低電力モードに移行
②18時間経過でBluetoothと探す機能がオフになり、超低電力モードに移行

基本的にAirPods Maxをキャリングケースに収納することですぐに低電力モードにすることができるため、使わないときには極力キャリングケースにしまうようにした方がバッテリー持ちを長くすることができるだろう。

まとめ:AirPods Maxは税込7万円を払う価値はあるのか

ここからはAirPods Maxの総評だ。Appleにとって初めてのオーバーイヤー型ヘッドホンとなったAirPods Maxは、随所にAppleらしさを光らせた特徴のある製品となった。

その最大の魅力は、原音に忠実な音とそれによって味わえる上質な音楽体験。そして長時間装着しても疲れない快適さにある。音は素直でニュートラルと評したが、低音域から高音域まで深みと透明感を持った非常にクオリティの高いヘッドホン、一般的なワイヤレスヘッドホンではなかなか味わうことのできない品質だったと筆者は感じた。

できること自体はAirPods Proとほとんど同じではあるものの、実際に得られる体験はまったく別物だ。その大きさや持ち運びのしづらさから外出する際は今後もAirPods Proを使うかもしれないが、自宅にいるときにあえてAirPods MaxではなくAirPods Proを選ぶ気にはなれないだろう。

筆者はAirPods Maxは十分に買いだと思っている。確かに7万円という価格は一般のユーザーには手が出しづらい。またAirPods Maxの性能・機能にも値段相応とは言いづらい部分もある。

しかし、もしこの製品を買える予算があるのなら、きっとAirPods Maxはあなたのオーディオ環境をワンランク、ツーランクは上げてくれるはずだ。日本の住宅環境ではHomePodのようなダイナミックなスピーカーを置くことが難しく金額面以外にもハードルがあるが、AirPods Maxには金額面以外のハードルはない。

気になるのはデザイン。そもそも筆者はAirPods Maxのデザインが100%の出来とは思ってはいない。しかし、デザインの良し悪しは 「カッコイイか」 「カッコ良くないか」 だけで判断するべきものではなく、快適で使いやすいかといった要素も含まれると思う。見た目だけをもって、AirPods Maxを評価するのはかなりナンセンスなことだと筆者は考えている。長時間の装着が快適だったことを考えると、今回のAirPods Maxのデザインを批判する気にはあまりなれなかったのだ。

初代AirPodsのときでさえ最初の頃は 「耳からうどん」、次世代モデルAirPods Proも 「マダツボミ」 といった揶揄もあったが、いまではどちらも当たり前のものとして受け入れられている。デザインがカッコいいに越したことはないが、それが全てではなかったという好例だったはずだ。

AirPods Maxもそうなることを望む。まだ登場したてで物珍しさのあるAirPods Maxがこれから世間にどのように受け止められるのか。その変化を、AirPods Maxをじっくり検証した先駆者としてこれから確かめていきたい。

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(当サイトで使用している画像は、いずれも正しい形での引用を行うか、各権利者に許諾を得て掲載しています。)

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AuthorNANA

東北出身の東京都在住(性別年齢は非公開)。趣味はガジェットいじり、旅行や料理、映画、ゲーム。イモリやサンショウウオが好きなので、家でよく愛でています。

同メディアで取り扱う情報は主にインターネットテクノロジー関連、AppleやGoogleなどの新製品やサービス。その他、今最も興味があるのは「VR/AR」「スマートスピーカー」。