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『Cuphead: The Delicious Last Course』開発者インタビュー。コロナ禍での開発裏話や 「ミス・チャリス」 参戦について開発陣が語る

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1930年代のアニメーションに影響を受けた懐かしいビジュアルとサウンド、そして簡単にはクリアさせてもらえない激ムズ難易度が特徴の大人気2D横スクロールアクションゲーム『Cuphead』。

2022年6月30日には、待望の追加DLC『The Delicious Last Course』が各プラットフォーム向けに発売し、早速プレイしているユーザーも多いのではないだろうか。

今回、本作の開発元であるカナダのデベロッパーStudio MDHRにメールインタビューを実施し、DLC『The Delicious Last Course』の開発についてお話を聞くことができたのでご紹介したい。

『The Delicious Last Course』は一体どういう背景のもとで開発されたのか、ちょっとした裏話も含めてご紹介したいと思う。

『The Delicious Last Course』開発者インタビュー

今回のインタビューでは、6月に配信開始した『The Delicious Last Course』について、コロナ禍での開発で大変だった点や、「ミス・チャリス」 の参戦がどのようにして決まったのかなどについてお聞きすることができた。

今回メールインタビューに応じていただいたメンバー:

  • Maja Moldenhauer氏 (スタジオディレクター&エグゼクティブプロデューサー)
  • Chad Moldenhauer氏 (The Delicious Last Course 共同ディレクター、美術)
  • Jared Moldenhauer氏 (The Delicious Last Course 共同ディレクター、デザイン)

ーー今回のDLC『Cuphead:The Delicious Last Course』は、新型コロナウイルスの影響でリリースが延期されたとのことでしたが、遅れの具体的な理由はなんだったのでしょうか?

Maja Moldenhauer氏

Maja Moldenhauer氏:
今振り返れば、私たちは『The Delicious Last Course』を発表するのが早すぎたのかもしれないと感じ、様々な場でもそのようにお伝えしてきました。

『Cuphead』のリリース直後、私たちには時間の制約からゲームに含められなかった魅力あふれるボスのアイデア、挙動のパターン、そしてゲーム内にちりばめられた秘密の数々など、多くのアイデアが手元に残っていました。その結果、2018年のE3にてマイクロソフトが私たちにファンのための新作をプレビューする機会を与えてくださった時、ついつい先走り過ぎてしまったのです。大好きなゲームを作る際に伴う危険ですね。

しかし、その後私たちは 「自らに挑む」 アプローチを取りました。具体的には『The Delicious Last Course』では、美術から挙動パターンのデザイン、音楽まで、馴染みのある『Cuphead』の続きにするのではなく、より洗練された『Cuphead』の創造を目指しました。

そのためには、自分たちの作っているモノが、元のゲームの内容から本当に進化しているのかと常に自問し続ける日々や、ゲームの製作を通して、自己批判的、内省的になることが必要でした。進化がないと感じられた場合、また振り出しに戻る、という苦渋の決断を下す場面もたびたびありました。

他の開発者たちからもお聞きになったと思いますが、すべての悪化の要因には、もちろんコロナ禍の影響があります。様々な年齢の子供を持つスタッフを多く抱える会社としてはもちろん、私たちは『The Delicious Last Course』を作る間、各スタッフが通常の仕事日の一日に達成できる作業の期待値を何度も再調整する必要に迫られ、混乱のさなかでの遅々とした開発を強いられました。何はともあれ、私はお互いの心身の健康を優先したチームを誇りに思っています。

ーーコロナ禍で開発を進める上で苦労したことはありましたか?また、リリースを早めるべく工夫したことがあれば教えてください。

Maja Moldenhauer氏:
前の回答でも述べた数えきれないコロナ禍の影響に加えて、他にも現場での困難が生じました。Studio MDHRで行っているような、昔ながらの方法でゲームを制作する場合は特にそうでした。

例として、『The Delicious Last Course』のサウンドトラックは110を超えるミュージシャンと歌手によって生の環境で演奏されました。全員の安全を優先し、政府の規制を遵守しながら、長い期間にわたって個別に録音を実行した音楽に、すべてのミュージシャンが一堂に会しているかような臨場感を与えるには、才能のあるエンジニアのチームの力を借り、音楽を精密にミキシングする必要がありました。

ーー『Cuphead』の本編をプレイしたことがあるのですが、とても難しく何度も挫折しかけた記憶があります。開発者の方は簡単にクリアできるんでしょうか?

Jared Moldenhauer氏

Jared Moldenhauer氏:
まず、あきらめずに遊んでいただいたことに対してうれしく思うと共に、おめでとうとお伝えしたいです!あなたの語った体験は、いろいろな意味で『Cuphead』本編、そして『The Delicious Last Course』のデザイン精神の中心にありました。

私たちが子供のころ好きだったゲームやシリーズの中には、難易度が高く、やっとの思いで勝利すると達成感を強く感じられるものがあります。意外かもしれませんが、私たちは、『Cuphead』と『The Delicious Last Course』を、難しくすることを目指して難しくしたわけではないのです。

私たちは、子供のころ大好きだったタイトル (例を挙げれば魂斗羅シリーズやロックマンシリーズなど) の、難しくもバランスのとれた、また細かな観察や根気が報われる感覚を再現したかったのです。

この質問に答えるとすれば、私たちはこれらのゲームのデザインと制作にはたくさんの時間を費やしているので、客観的に取り組むことは難しいのですが、自らの生み出したものに苦戦を強いられるときはもちろんあります!

ーーDLCの難易度は本編に比べてどう設定していますか?序盤をプレイした感じでは同じくらいか、少し難しくなっているように感じました。

Maja Moldenhauer氏:
『The Delicious Last Course』のボス戦やチャレンジは、今までになく独創的で、ユニークで、そしてワイルドなものに仕上がっています。この新たな冒険ではプレイヤーに一からゲームのコンセプトを説明することはないので、まず本編をプレイし、『Cuphead』のコンセプトに慣れ、前作のボスやステージに挑戦することをおすすめします。

とはいえ、これまでに『Cuphead』のコミュニティからの数年に渡るフィードバックを読み解くと、個々のプレイヤーが難しいと感じるものが異なるという事実も確かにあります。開発チーム内でさえ、本編のボスの方が『The Delicious Last Course』のボスよりも難しい、またその逆である、と意見が分かれているのです!

新しいボスやステージのデザインは本編をプレイ済みのプレイヤーを驚かせたり喜ばせたりすることを狙いにしつつ、両作を一遍にプレイした場合でも『Cuphead』体験の一環としてぴったりに感じられるようになっています。

また、新しいプレイアブルキャラクターのミス・チャリスは全く新しい技やスキル (2段ジャンプ、ダッシュ・パリィ、無敵ローリング) から生まれる根本的に新しいプレイスタイルで難易度の問題を逆転できると考えています。

カップヘッド、マグマン、チャリスのトリオチームの結成によって、『The Delicious Last Course』DLCパートのみならず、『Cuphead』全体を攻略する方法が、さらに増えたことは確かだと思います。

ーー今回のDLCでは、新たなプレイアブルキャラクターとして 「ミス・チャリス」 が使えるようになりましたが、なぜ彼女をプレイアブルキャラクターとして登場させようと思ったのでしょうか?

Chad Moldenhauer氏

Chad Moldenhauer氏:
ミス・チャリスをプレイアブルキャラクターとして実装することは『Cuphead』開発当初からの夢でした。

ゲーム本編にも登場する 「伝説の聖霊チャリス」 というキャラクターには、メインストーリーにおいてより大きな役割を持たせたかったのですが、ゲームの完成を発売に間に合わせるため、そうしたアイデアを一旦棚上げするという苦渋の決断を余儀なくされました。

これはある意味、不幸中の幸いとも言えるもので、私たちがチームとして膝を突き合わせ、彼女にとってぴったりのストーリーとはどのようなものか、どのようにして彼女をカップヘッドとマグマンに合流させるかなどを検討する時間を与えてくれました。

『The Delicious Last Course』は、彼女のキャラクターとしての能力を十分に発揮させ、新たにトリオとなったチームにおける彼女の重要性を際立たせていると思い、私たちはこの結果にとても満足しています。

ーーミス・チャリスについて、カップヘッドやマグマンとの違い、固有の技などの特徴を詳しく教えていただきたいです。また、ミス・チャリスを上手に操作するための簡単なアドバイスももらえると嬉しいです!

Jared Moldenhauer氏:
2段ジャンプ、一定時間無敵になるローリング、ピンクの障害物をパリィできるダッシュなど、ミス・チャリスはユニークな技のレパートリーを持っています。加えて、ミス・チャリスにはカップヘッドやマグマンとは別に、唯一無二の必殺技が3つも備わっています。その代わり、ミス・チャリスをボスまたはプラットフォームステージで使用するために、プレイヤーはチャームスロットに特別なチャームを装備する必要があります。

ミス・チャリスは、プレイヤーに異なる戦略的アプローチを提供することを狙ってデザインされました。例えば、ピンクの障害物をパリィするための二回目のジャンプをするタイミングについてあまり考えたくないプレイヤーは、ダッシュ攻撃で自動的に対応できるミス・チャリスを、より自信を持って使うことができます。

また、彼女の一つ目の必殺技は、カップヘッドやマグマンの前方に広がるエナジービームとは違い、縦に広がるビームとしてデザインされています。性質が大きく異なるこの必殺技を使用する際には、ボスとの相性、スクリーン上の位置を頭に入れて、慎重に検討する必要があります。

ゲームの発売以来、カップヘッドとマグマンの従来のプレイスタイルに対して、ミス・チャリスを楽しむプレイヤーを多く見てきましたが、従来の技を使い続けることを好むプレイヤーも多く見られます!この現象は、それぞれのキャラクターに固有の強みがあるということを表しているとチームは考えています。

ーー今回のDLC『The Delicious Last Course』の構想はいつからあったのでしょうか?また、アイデアは何から生まれたのかなどのエピソードなどがあれば教えていただきたいです。

Maja Moldenhauer氏:
ある意味、『Cuphead』本編の開発時からずっと『The Delicious Last Course』の構想はありました。

まず、『Cuphead』本編において登場する伝説の聖霊チャリス (霊廟ステージで会うキャラクター) にはキャラクターとしてスポットライトを当て、より大きな役割を持たせる予定でした。

多くの開発者が共感できることだと思いますが、ゲーム制作の終盤、たびたび厳しい決断を下すことを強いられることがあり、その結果『Cuphead』本編ではチャリスのすべての物語を語ることが許されませんでした。

『Cuphead』の発売と驚くほどの好評の後、語り切れなかったチャリスの物語に加えて、日の目を見なかったボス、キャラクター、オマージュに関するアイデアの数々について考えるのをチームの誰もがやめられませんでした。私たちはチームとして、チャリスの冒険を、新しいチャレンジを交えながら、皆さんにお届けする方法を探し始めたのです!

ーー『Cuphead』の特徴のひとつに、懐かしさたっぷりのBGMがあると思います。新しいステージのBGMはどういう部分にこだわりましたか?

Jared Moldenhauer氏:
『The Delicious Last Course』では、作曲家のKristofer Maddigan氏と協力して、各音楽トラックのアイデアやテーマをボスやステージの制作とより密接な状態で作成することを、意識的に取り組みました。

『Cuphead』本編制作時には、たびたび音楽がゲームのどの部分にフィーチャーされるのかをKrisに伝えずに、時代に対するオマージュを感じられる作品を制作してもらい、その後、ステージが確定した際に後付けで調整することを繰り返していました。

しかし今回は、はるかに大きく、そして豊かなオーケストラサウンドを求めて、それぞれの音楽がオーダーメイドされたかのように感じられるようにしたかったのです。同時に、突き詰めれば『The Delicious Last Course』での音楽の根幹は本編の時と変わりません。有名で歴史あるジャズやビッグバンドの作曲家が、今生きてビデオゲームを体験していたら作ったであろう曲を作ることを徹底しました!

ーー今回のDLCで追加された新要素の中で、開発者の皆さんが最も気に入っているものがあれば教えてください。

Chad Moldenhauer氏:
チームの全体が『The Delicious Last Course』に込めたすべてのものを誇りに思っていますが、新要素の中でも私たちが特に気に入っているのが 「King of Games」 戦です。

今回、プレイヤーはプラットフォームチャレンジではなく、King of Gamesという風変わりなキャラクターによって主催される高貴なトーナメントで戦うことによって、コインを得ることができます。

それぞれのボスはかなり独特にデザインされており、標準の武器やお守りでは決して倒せず、パリーすることでしか勝つことが許されていません!美術的なテーマから、それぞれの戦闘におけるミニゲーム形式の攻略まで、全てをとても楽しく創造したのを覚えています!

ーー『Cuphead』は長年にわたってID@Xboxプログラムを利用し開発してきたとお聞きしています。どう言った点が開発に役立ったか、またその経験は今回のDLCにおいてどのように生きているのか、お聞かせいただけますでしょうか。

Maja Moldenhauer氏:
ID@Xboxプログラム無くして、私たちがここまで来ることはなかったと言っても過言ではありません。

Alexis Garavaryan氏 (オンラインで『Cuphead』チームに案内を送ったID@Xboxプログラムの元チームメンバー) に最初に声をかけていただいた時から今日に至るまで、 ID@Xboxチームは私たちの味方として常に寄り添ってくれました。初めてのゲームを制作するにあたって、当時未経験の開発者として苦労を重ねていた私たちにとってID@Xboxチームは信じられないほどのリソースを提供してくれました。

彼らがいなければ、『Cuphead』を生み出し、本作に興味を持つ多くのゲーマーの皆さんの注目を得ることはできませんでした。私たちは今も密接に連絡を取り合い、Xboxファンに『The Delicious Last Course』の開発の話を共有し続けています。

ーーDLCのリリースから数週間が経ちましたが、ユーザーからの評価はどうですか?また、販売数は想定に比べてどうですか?

Maja Moldenhauer氏:
正直なところ、今『The Delicious Last Course』に寄せられている反響を正しく表現できる言葉がありません!なぜならチーム一同が『The Delicious Last Course』の発売以来、『Cuphead』コミュニティから寄せられる極めて好意的な反応に、圧倒されているからです。

私たちは今、素敵なファンアートからプレイ動画、SNS上での支持のメッセージまで、『Cuphead』に関して多くの親切で支持する言葉を目に、そして耳にしています。

私たちは、『Cuphead』本編の成功が約束されていたものだとは信じておらず、同様にDLCの制作中も、ファンにどう受け取ってもらえるかを知る機会はありませんでした。ただし、私たちは『The Delicious Last Course』はファンの皆さんの『Cuphead』への継続的な支持に報いることを一心に思い制作したため、彼らがDLCを快く受け入れてくれたことには感謝してもしきれません。

ーー最後になりますが、今後新たなDLCを開発する予定はありますか?

Chad Moldenhauer氏:
私たちは、子供のころから大好きだったゲームや漫画、映画に加えて、尊敬する芸術家や職人から多くのインスピレーションを得ています。水彩画家から伝説的なアニメーターまで、私たちは学びを得るため、目を引く技術を常に研究しては、折を見て再研究しています。

『Cuphead』と『The Delicious Last Course』では、私たちが古典とも呼べる様々な題材を用いて、プレイヤーにノスタルジックな喜びを届けることに、愛着を感じていることを確信しました。私たちは、特定のスタイルや時代を彷彿とさせるものをつくることだけではなく、実際の技法に挑み、全く別の時代から引き抜かれたようなものを再現できないかと実験することが大好きなのです。

Studio MDHR で私たちが生み出すものに 「隠し味」 があるとすれば、それはおそらく私たちが自らに制限を課し、そうした出発点から何を生み出せるのかを模索するだけの実直さを持っているという事実に他なりません!私たちが今後発表するものも、同じ気質によって作られると言ってもよいかもしれませんが、皆さんの予想を超えていく全く新しい結果に結びつくことを期待しています。

という訳で、前置きが長くなってしまいましたが、現時点において具体的な新規プロジェクトについてお話できることはありません。

ーーStudio MDHRの皆さん、ありがとうございました!

インタビューを終えて

今回のメールインタビューでは、DLC『The Delicious Last Course』を開発する上での様々なお話や、新たにプレイアブルキャラクターとして使えるようになったミス・チャリスにまつわるお話を聞くことができた。

昔ながらの手法にこだわった本作において、人との接触を最小限に制限しなければならなかったコロナ禍での開発はやはり大変だったようだが、それでもDLCのクオリティは本編以上のものに仕上がっていたように思う。

また、筆者が特に興味深いと思ったのは『Cuphead』と『The Delicious Last Course』の難易度について。本編の時点で激ムズだと話題にはなっていたが、DLCも含め、開発チームは意図的に高い難易度に設定しようとしたわけではなく、これも昔のゲームの再現であるという。

インタビューでは魂斗羅シリーズやロックマンシリーズなどが例として挙げられていたが、確かに筆者も小さい頃にプレイしたゲームはどれも難易度が高く、何度もやられながら根気強く敵の動きを分析して、どうにかボスを撃破してきた記憶がある。

ビジュアルや音楽だけでなく、ゲーム体験でさえも懐かしさを意識した『Cuphead』と『The Delicious Last Course』。筆者と同じように昔のゲームの難易度に何度も打ちのめされてきた経験がある人にはもちろん、最近ゲームを始めたばかりでまだ難しいゲームをプレイしたことがないという人も、ぜひ本作にチャレンジしてみていただきたい。

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(画像:Studio MDHR)

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AuthorNANA

東北出身の東京都在住(性別年齢は非公開)。趣味はガジェットいじり、旅行や料理、映画、ゲーム。イモリやサンショウウオが好きなので、家でよく愛でています。

同メディアで取り扱う情報は主にインターネットテクノロジー関連、AppleやGoogleなどの新製品やサービス。その他、今最も興味があるのは「VR/AR」「スマートスピーカー」。