iPad mini 5 (2019) レビュー | 持ち運びタブレットの決定版。Apple Pencil対応で究極の小型デジタルスケッチブックに
最後のアップデートから早くも3年半が経過したiPad miniに、ようやく新型モデルが登場した。
名前は 「iPad mini (第5世代)」 。最新iPhoneと同じ6コア内蔵のA12 Bionicプロセッサが搭載され性能が大幅に向上。さらにApple Pencilをサポートするなど、シリーズで初めて本格的なイラストが描けるようになっている。
筆者は発売日にApple Storeに赴き、最速で 「iPad mini (第5世代)」 を購入することができた。同記事ではiPad mini(第5世代)がどれほど進化したのか、実際に使って確かめてみたのでそのレビューをお届けしたいと思う。
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本体デザインは前モデル「iPad mini 4」と変わらず
まずは本体デザインをチェックしていこう。iPad miniの特徴はやはり何と言ってもその小型なデザイン。製品本体のサイズは縦203.2mm×横134.8mm×厚さ6.1mmで、男性だけでなく女性でも手が大きめな方であれば片手で握るように持つことができる。また、重量も300g(セルラーは308g)ととても軽いため持ち運びに優れているのが最大の魅力だ。
ただし、iPad mini(第5世代)の製品デザインは、前モデル「iPad mini 4」(2015年発売)からほとんど変わっていない。本体サイズはもちろん、7.9インチの画面やベゼルの太さなど、見た目の変化はほぼないと言ってもいい。嬉しいような寂しいような。
ホームボタンも健在だ。もちろんTouch IDが搭載されているため指紋認証でスムーズに画面ロックを解除することが可能。記憶できる指紋は最大5つまでとなっていて、家族や恋人でそれぞれ指紋を登録すれば共有で使うこともできるだろう。最近ではiPhoneやiPadもベゼルレスと顔認証が主流になってきているため、もしかすると同モデルが “Touch IDを搭載した最後のiPad mini” となるかもしれない。
底面に搭載されているのはUSB-CではなくLightningポートで、その左右にはスピーカーが搭載されている。iPad Proのような4つのスピーカーは搭載されず音質が大幅に向上することはなかったが、iPadのスピーカーは総じて音質が高いため、YouTube動画を見たりする分にはこのレベルでも十分満足できるだろう。
背面左上にはメインカメラが内蔵されている。カメラは8メガピクセル(800万画素)で、こちらも上位モデルiPad Proとしっかりと差がつけられている(参考:iPad Proは1,200万画素)。
ただし、この点についてはiPhoneを持っていれば解決できる可能性が高い。というのも、iPhoneの場合はだいぶ前から12メガピクセル(1,200万画素)の撮影に対応している上に、最近はデュアルレンズカメラのおかげで綺麗でクオリティの高い写真が撮影できるようになった。iPadユーザーの多くはiPhoneも同時に持ち歩いていることが多いため、写真や動画の撮影をiPhoneに任せてしまうことでiPadのカメラ性能は特に重要なものではなくなるはずだ。
背面カメラについても変更はなかったが、フロント(前面)カメラは1.2メガピクセルから8メガピクセルへと進化している。筆者はあまりセルフィー写真を撮ったり、FaceTime通話(ビデオチャット)をする機会がないのだが、もしフロントカメラを使う機会が多い方であればこの変更は重要なアップデート箇所となりそうだ。
スリープボタンは本体上部に配置。さらに音量調節ボタンは本体サイドに配置されていたりとこれらも前モデルから仕様に変更はない。3.5mmイヤホンジャックが廃止されず生き残っているのも有線イヤホン派にとっては嬉しい仕様と言えそうだ。
ここまでの話を聞くと、iPad mini(第5世代)のデザインは前モデルからほとんど変化がないため、iPad mini 4で使用していたカバーやケースをそのまま流用できそうだと感じるかもしれない。ただ、カメラ位置などには若干の変更が加えられているため、前モデル用のケースが使えなかったという報告も上がっている。できればiPad mini(第5世代)用に作られたものを新しく購入した方が良さそうだ。
今回筆者が購入したのはiPad mini (第5世代)のゴールドモデル。カラーラインナップはゴールドの他にもシルバー、スペースグレイが用意されているが、筆者が選んだゴールドモデルはややピンクに近いカラーリングになっている。女性人気が高そうだ。
前面のベゼルのカラーはホワイト。これはシルバーモデルとゴールドモデルのみの仕様で、スペースグレイモデルのみブラックのベゼルが採用されている。最新のiPad ProやiPhoneに比べるとベゼルの存在感が結構あるため、もしベゼルの存在が気になる方はスペースグレイモデルを購入してみてもいいかもしれない。
最大の特徴は小さくて軽くて持ち運びやすい
iPad mini(第5世代)の持つ特徴の多くはiPad AirやiPad Proにも共通しているものが多く、性能的にiPad miniでなくてはならないことは少ない。しかし、その中で他のiPadよりも圧倒的に優れている部分が存在する。それは 「コンパクトさ」 だ。これだけで、iPad mini(第5世代)の購入を決断するのに十分な理由となり得るだろう。
11インチ「iPad Pro」とのサイズ比較 (iPad Proは保護フィルム使用中)
前述した通り、iPad mini(第5世代)の本体サイズは縦203.2mm×横134.8mm×厚さ6.1mm。これはB5用紙よりもひとまわり小さい 「A5用紙」 よりもさらに小さいサイズとなっている。男性用ジーンズやジャケットのポケットにもギリギリ入るほどのサイズ感で、よっぽど小さなカバンでなければ収納して持ち歩くことができるはずだ。
重量もかなり軽い。iPad mini(第5世代)のWi-Fiモデルは300g、Wi-Fi + Cellularモデルでも308gで、ひとつ上のサイズである9.7インチのiPad(第6世代)と比べるとその差は150g以上。持ち運びの際にはもちろんだが、普段の使用時にも腕にかかる負担が少ないため、女性でも容易に扱うことができる。カバンの中身はできるだけ軽くしたいけど、タブレット端末の便利さに惹かれているーーーそんなユーザーにぴったりの端末だ。
電子書籍:水平線の文月(著/ななてる氏)
しかも、カバンから取り出した時は片手で操作できるため、自宅内だけでなく外出時のお供にも最適。荷物がたくさんあるときにも邪魔になりにくいため、旅行時の利用もオススメだ。見知らぬ土地で地図を見たり、カフェで休憩するときや電車移動中に電子書籍を読んだり。他のiPadよりも画面こそ小さいが、どんな場所でもサッと気軽に取り出してすぐに作業を開始できるのは大きな強みだと筆者は感じている。
実はディスプレイ技術が大きく向上
見た目はほとんど変化していないiPad mini(第5世代)だが、実は内部の仕様は大きく変更されている。
その中で特徴的なのは、搭載されているディスプレイに多くの最新技術が投入されているということ。ガラス面と液晶の隙間をなくし、タッチする指と画面とのギャップを埋めるフルラミネーションディスプレイ(ダイレクトボンディング)が搭載されているのは前モデルと同じだが、これにさらにTrueToneテクノロジーと広色域(P3)ディスプレイが加わった。
iPad mini(第5世代)の画面に新搭載された機能
・TrueToneテクノロジー
・広色域(P3)ディスプレイ
TrueToneテクノロジーは、環境光に合わせて画面のホワイトバランスを自動調整する機能。そして広色域(P3)ディスプレイは写真・映像コンテンツを正しい色で表現することに長けた機能。この両機能は、元々iPad Proにのみ搭載されてきたものではあるのだが、晴れてミニモデルであるiPad mini (第5世代)でも使えるようになった。おかげでiPad miniの画面の色再現度は大きく改善され発色はとても綺麗に。お世辞抜きで本当に美しい。
この画面が真価を発揮するのは、例えば撮影した写真をチェックする時。筆者はよく出張先で撮影した写真をiPad ProやMacBook Proでチェックする機会が多いのだが、iPad miniが広色域(P3)ディスプレイに対応したこともあり、今後はiPad ProではなくiPad miniを持ち歩く機会が増えそうな予感がしている。正しい発色をどんな場所でも見やすい画面で表示することができるようになったiPad miniは、iPad Proの代わりを充分に務められるハズだ。
ひとつ残念なのがこれほどまでの進化を見せておきながら、「ProMotionテクノロジー(リフレッシュレート120Hz)」 は搭載されなかったこと。これについては、おそらくiPad Proとの差別化やコスト高騰化を避けるため搭載が見送られたのではないかと個人的に予想している。
ちなみにディスプレイ技術とは関係ないのだが、iPad miniは他のiPadに比べてやや文字が小さいため、老眼の方が使うには少々厳しいかもしれない。設定で文字を大きくすることもできるが、そうなると画面に占める文字の割合が多くなり画面が狭くなりがち。もしお年を召した方などにプレゼントするなら、iPad miniではなくiPadやiPad Airなどをプレゼントすると喜ばれるかもしれない。
Apple Pencil対応でデジタルキャンバスに
ディスプレイ技術が大きく進化したiPad mini(第5世代)だが、最もユーザーを驚かせたのはおそらくApple Pencilのサポートだろう。使用できるApple Pencilは第2世代ではなく第1世代で、同時に発表されたiPad Airでも使用することはできるのだが、それでも手のひらサイズのiPadでApple Pencilが使えるようになったのはとても大きな変化だ。
街中で突然スケッチしたくなったら、Apple PencilとiPad miniを取り出せばすぐに目の前の風景を描き始めることができる。また、Apple Pencilは咄嗟のメモを取るのにも便利だ。これまでのiPadでは文字を入力するにはソフトウェアキーボードでの入力が必須だったため、手書きの方が得意なややアナログ派の方々もiPadを便利に使いこなせるようになったはずだ。
Apple Pencilの書き心地はやはりiPad Proの方が優れているようだ。細かい違いかもしれないが、iPad Proは”描く感覚”が手にダイレクトに伝わってくるのに対して、iPad miniのそれはやや硬い質感。書き込むというよりもむしろ”なぞる”といった感覚に近い気がする。
また、画面が小さいため絵全体のバランスも取りづらく大作を描くのにはやや不向きだ。雄大な自然を描いたり、対象を細かく描写したい場合はどうしても11インチもしくは12.9インチの大画面iPad Proが欲しくなってしまう。
とはいえ、片手でiPadを持って手軽に絵が描けるという点においては新しい体験だったことには違いない。どちらかというと手軽に絵を描くための道具と考えるべきなのかもしれないが、ほかのiPadでは実現できないことなのでこの小さなデジタルキャンバスに惹かれるユーザーも一定数いそうだ。
A12 Bionicで性能は大幅に向上
撮影した写真や描いたイラスト・風景画の編集・修正を、iPad miniの中で完結できるようになった。この作業にはマシーンに十分な処理能力が必要とされるが、iPad mini(第5世代)はiPad Proと同じレベルの性能を持つようになったため、わざわざ他デバイスに作業環境を移す必要がない。
そのパワーの源は、内蔵されているA12 Bionicプロセッサ。このチップセットは、最新のiPhone(iPhone XS/XS Max, iPhone XR)に搭載されているものと同じもの。2つの高性能コアと4つの高効率コアの計6コアで構成された超高速プロセッサになっており、処理能力の大幅向上やグラフィック能力の向上が行われている。
Appleによると、同プロセッサを搭載したことでiPad mini(第5世代)は前モデルの 「iPad mini 4」 から最大3倍高速化。グラフィックは最大9倍の性能になっているという。それが本当かどうか、筆者はGeekbenchでベンチマークを計測してみた。結果は以下。
シングルコア4,809、マルチコアは11,537。グラフィック性能を示すメタルスコアは21,771。シングルコアはAppleの言う通り前モデルから3倍、マルチコアに至っては4.5倍の向上。3年半というブランクがあったこともあるが、しかしこれは普通にすごいことだ。
iPad mini(第5世代) | iPad mini 4 | |
---|---|---|
プロセッサ | A12 Bionic (6コア) | A8 (2コア) |
シングルコアスコア | 4,809 | 1,652 |
マルチコアスコア | 11,537 | 2,849 |
Metal | 21,771 | 4,811 |
また、グラフィック性能も約4.5倍程度の向上となっていることが確認できた。グラフィック性能については、Appleのアナウンスとやや異なる数字が出ている気もするが、ただ数字的には3Dゲームなどグラフィック負荷がかかるタイトルであっても十分満足に遊べるレベル。ゲームでなくとも画像・動画の編集などでも、この性能は存分に活かされるだろう。
ちなみに、上記ベンチマークからiPad mini(第5世代)のメモリ容量は3GBであることが判明した。つまり、iPad miniはiPhone XRとほぼ同じ性能であることになる。実際、iPad mini(第5世代)の動作速度はとても快適だ。片手サイズのデバイスにこれほどの性能が詰まっていることを考えたら驚きでしかない。
期待度以上の出来上がりで満足
今回登場した新型iPad miniこと 「iPad mini(第5世代)」 は見た目の変化が少ないため、旧モデルから何が変わったのかやや伝えづらいものだった気もするが、しかし実際に使ってみて感じたのは3年半という月日はこれほどまでにiPadシリーズを進化させることができたのかという衝撃。
ほぼ化石と化していたiPad miniが、最新プロセッサやディスプレイ技術を手に入れることでiPad Proにとても近い性能となった。3年半という月日がいかに長いものだったのかを痛感するとともに、今後はどのiPadをユーザーにオススメするべきか正直悩むラインナップになってきていることを感じている。それほど、iPad mini(第5世代)は頼もしい存在になったということなのだろう。
ちなみにiPad mini(第5世代)にはまだまだ足りない要素がある。まずは、iPad Proのようなベゼルレス化と顔認識機能、そしてProMotionテクノロジーやUSB-Cポートの搭載などだ。また、第2世代Apple Pencilのサポートもまだ行われていない。
前述したように、iPad Proとの差別化やコスト高騰化を避ける関係でこれらの機能がすべてiPad miniに実装されるのはもう少し先となるだろう。しかし、現行のiPad Proが(Face ID機能を除いて)とても使いやすい端末となっているため、iPad miniもいつかそうなって欲しいと願うばかりである。
Apple Pencil(第2世代)のサポートはおそらくUSB-Cポートの搭載と同時に行われるため、数年後に登場するかもしれない次期モデル 「iPad mini(第6世代)」 の登場にも期待だ。
もし買うならSmart Coverもセットで
筆者は今回 「iPad mini(第5世代)」 と一緒に、同時発売のSmart Coverを購入してみた。選んだのはこの春登場の新カラー 「パパイヤ」 。Apple Storeのスタッフ皆さんのオススメカラーとなっていて、特にゴールドモデルとの相性が良い。とてもポップなカラーで、明るい色が好きな方に人気のモデルとなりそうだ。
外側はプラスチック素材、内側はマイクロファイバー。内側のマイクロファイバーは普段から常に触っていたいほど手触りしっとり柔らかく、さすがAppleと言いたくなる質感だ。iPadの画面を傷つける心配は一切ないだろう。
機能はこれまでのiPad mini用のSmart Coverと特に変わらず。普段は蓋を閉じた状態で置いておき、使うときはカバーを外すと自動で画面が点灯。また使わなくなったらパタンと蓋を閉じると自動で画面ロックされる仕組みだ。
SmartCoverを背面で折りたたむことで簡易的なスタンドとして利用できる。Apple Pencilで絵を描くにはやや不安定な感もあるが、動画を見たり、FaceTime通話をするには最適。やはりSmart Coverがあるとないとでは、iPadの利便性は大きく違うものだ。
同カバーの価格は4,500円(税別)。サイズが小さいためか他のiPad用のSmart Cover(9.7インチiPadをのぞく)に比べたら少し安く設定されているようだ。iPad miniを購入するならぜひ購入を検討してみていただきたい。購入はこちらからどうぞ。
まとめ:「iPad mini(第5世代)」 はミニタブレットの決定版
「iPad mini (第5世代)」 は姿形はほぼ前モデルから変わっていないもの、中身は想像以上のアップデート。画面サイズ的にどうしてもメイン使いには不足を感じてしまう可能性もあるが、iPad ProやMacのサブとしてだけでなくメインタブレットとして使えそうなデバイスに進化している。
特に画面の質やApple Pencilのサポートは、iPad miniの存在意義すら変えてしまうかもしれない。ベッドの上でコロコロしながらネットを見たりYouTubeを見たりするにはもちろん、さらには外出先でちょっとした作業をしたり暇な時間に本格的なゲームをプレイしてみたりと様々な機会に使うことが可能になり、外出時のお供としてとても心強いデバイスに。
実際筆者は今日1日ずっとiPad miniとともに行動してみたが、まったく困ることなく全行程を終えることができた。来月初めに北米に出かける機会があるのだが、せっかくなのでiPad mini(第5世代)を持って行ってみようと思う。そう思わせるくらいに、iPad mini(第5世代)は小型ながら超パワフル。もし筆者と同じように小型なタブレットが欲しいと感じているなら、同デバイスの購入を強くオススメしたい。
ちなみに筆者は今回もセルラーモデルではなくWi-Fiモデルを購入した。その理由は、なんだかんだ言ってiPadは屋内で使う機会が多く、外に持ち出す際もiPhoneのテザリングで電波を供給できるから。そして何より背面のアンテナバンドが邪魔に感じてしまうからなのだが、今回のiPad mini(第5世代)に関してはセルラーモデルでも良かったかなとも少し思っている。iPhoneのテザリングでも十分だとは思うのだが、もしWi-Fi環境のない場所で使う機会が多いのであればセルラーモデルを購入してもいいのではないだろうか。ぜひ、あなた自身のライフスタイルに合わせてどちらを購入するかを考えていただきたい。
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東北出身の東京都在住(性別年齢は非公開)。趣味はガジェットいじり、旅行や料理、映画、ゲーム。イモリやサンショウウオが好きなので、家でよく愛でています。
同メディアで取り扱う情報は主にインターネットテクノロジー関連、AppleやGoogleなどの新製品やサービス。その他、今最も興味があるのは「VR/AR」「スマートスピーカー」。