iPad Pro 2020 レビュー | 伝えたい11インチモデルの魅力。初のマルチカメラで大胆構図の写真も
Appleのプロユーザー向けタブレット 「iPad Pro」 に、約1年半ぶりの新型モデル 「iPad Pro (2020) 」 が登場した。
2018年に発売された先代モデルからデザインはほとんど変わらないものの、背面カメラがデュアルレンズになり、LiDARスキャナも新たに搭載。プロセッサはマイナー改良された 「A12Z Bionic」 が搭載されたほか、次世代のWi-Fi規格である 「Wi-Fi 6」 に対応するなど、地味ながら複数のアップデートが行われている。
筆者は 「iPad Pro (2020)」 を発売日に入手することに成功、さっそく使用することができた。そこで当レビュー記事では、本製品を実際に使ってみて感じたことや、前モデルからどんな変化があったかについて実機を用いて詳しくお伝えしたいと思う。
また、同時にリリースされた 「iPadOS 13.4」 のおかげで、iPad Proはいままで以上に ”PCライク” に使えるように。これらの進化によってどれほど便利に使えるようになったのかも、あわせて紹介したい。
デザイン
まずは製品デザインについて。
iPad Proは先代の2018年モデルでメジャーアップデートを果たしており、画面上下のベゼルが大幅に狭くなったことで表示領域が広くなったほか、従来まで搭載されていたホームボタン (Touch ID) が廃止されて顔認証機能 「Face ID」 が利用できるようになった。
今回の 「iPad Pro (2020)」 もそのデザインを引き継いでおり、基本的なデザインはほとんど変わっていない。大きく変わったところといえば背面カメラがデュアルレンズカメラになったことだが、これについてはカメラの項目(後述)でじっくりと紹介するつもりだ。
今回のレビューでは、はじめてベゼルレスiPad Proに触れるという方にも配慮し、デザインなどに変更がない部分についても改めて紹介したいと思う。すでに2018年モデルを知り尽くしている方は、復習のつもりでお付き合い頂ければと思う。
こちらが筆者が購入した 「iPad Pro (2020)」 。iPad Proには11インチモデルと12.9インチモデルの2つのサイズが用意されているが、筆者が購入したのはそのうちの小型タイプである11インチモデル(Wi-Fiモデル)。カラーはスペースグレイだ。
おもて面は周囲1cmほどのベゼルを残し、端末全面がディスプレイ。画面解像度は2,388×1,668/264ppi(12.9インチモデルは2,732×2,048/264ppi)で、Retinaディスプレイ仕様になっている。
2017年以前の旧デザインを採用したiPadは、ホームボタンを搭載する関係で四角のディスプレイが搭載されていたが、2018年以降の現行デザインを採用したiPad Proはディスプレイの四隅が丸みを帯びたラウンド型。ボディとディスプレイが一体化したかのようなデザインに変わっている。ちなみに搭載されているのはあくまで液晶ディスプレイで、最新iPhoneなどに搭載されている有機ELディスプレイではないため、表示の美しさはiPhoneに比べて (ほとんど気づかないレベルで) 劣る。
ベゼルレスデザインの採用により、側面のエッジにも変化が。旧型デザインを採用したiPadは、側面がやや滑らかな丸みを帯びていたが、2018年以降の現行デザインでは 「iPhone 5s」 「iPhone SE」 のように角ばったエッジに変わっている。ベゼルが狭くなったにも関わらず手に馴染み、持ちやすくなった。電子書籍を読むときなど、iPadを長時間手に持つときに力を発揮してくれる。
側面のエッジ部分には、様々なボタンや各種コネクタなどが搭載されている。旧来のデザインと配置が変わらないのは、上部のスリープボタンや右側面の音量調節ボタン、そして上下に搭載された4つのスピーカーだ。
一方で2018年以降の新デザインになって変化があったのは、右側面のApple Pencil 接続用の磁気コネクタ。ここに第2世代のApple Pencilをカチッと取り付けることで、Apple Pencilのペアリングや充電が可能だ。
ちなみに、iPad Pro(2018/2020) で利用できるApple Pencilは第2世代のものだけで、従来のLightningポート経由でペアリングする第1世代のApple Pencilは使用できないので注意が必要だ。
充電ポートはUSB Type-C。付属の純正アダプタを使うことで18Wで急速充電可能。さらに18W以上の出力に対応したUSB Type-C充電器を使うことで最大30Wで充電できる。
また、USB Type-Cを採用した外部アクセサリを接続することも可能だ。iPad Pro(2018)が登場した当初は従来のLightningポート用アクセサリーが使えず困った方もいたとは思うが、あれから約1年半も経ち、いまでは拡張ハブや変換アダプタなど多くのアクセサリーが登場していることもあって、周辺機器に困ることはないはず。もちろん今回の2020年モデルでは2018年モデルで使用していたアクセサリーをそのまま流用することもできる。この点については心配無用だ。
iPad Pro (2018) 発表時の画像
ちなみにiPad Proに搭載されたUSB Type-Cポートは、iPhoneを充電することが可能だ。Type-CポートにUSB-C to LightningケーブルとiPhoneを接続することでiPad Proのバッテリー残量をiPhoneに分け与えることができる。
11インチのiPad Proのバッテリー容量は約8,000mAh。そして、12.9インチiPad Proのバッテリー容量は約10,000mAh。対するiPhone 11のバッテリー容量は3,110mAhだ。iPad Proの電気をiPhoneに送るためにはいくらかロスが発生するため、1〜2回程度充電できるといった感じだ。
iPad Pro(2020)の最大の進化ポイントとも言えるのが背面カメラだ。iPad Pro(2020)のカメラユニットは、iPhone 11シリーズと似た正方形のデザインを採用している。ただし、カメラのレンズ構成は超広角と広角のデュアルレンズ、そしてLiDARセンサーの3つで、iPhone 11やiPhone 11 Proとは異なる。ちなみに先代の2018年モデルは広角レンズのみ搭載されていたため、2020年モデルは ”眼” が2つ増えた形だ。
カメラ比較 (左:iPad Pro 2020 / 右:iPhone 11 Pro)
デュアルレンズ化を果たしたことでカメラの存在感が増した感もあるが、慣れれば違和感なく受け入れられるのではないかと筆者は思っている。
というのも、iPhone 11シリーズの大きなカメラも初めは 「タピオカレンズ」 などと揶揄されたものの、いまとなってはタピオカレンズ付きのiPhoneも当たり前の存在となった。しかも、iPad Proの場合は端末面積に対してカメラユニットのサイズが小さいので、違和感はそんなにないのが実際のところ。
また、カメラが大きくなったことで意外な恩恵もあった。2018年モデルではカメラの出っ張りのおかげで机などに置いたときにiPad Proがガタついていたが、新型モデルではカメラが大きくなったことで安定感が増し、ガタつきがすこし軽減された。ケースをつけない派でガタつきが気になっていた方には朗報とも言えるかもしれない。
純正キーボード 「Smart Keyboard Folio」 や 「Magic Keyboard」 を接続するために使用するSmart Connectorは端末背面に搭載されている。場所は2018年モデルとまったく同じだが、背面カメラの形状が変わったため2018年モデル用に販売された 「Smart Keyboard Folio」 は使えない。注意が必要だ。
画面の性能について
600ニトの明るい画面。P3広色域にも対応
iPad Pro(2020)の画面は、非常に高性能なものになっている。iPhoneのような有機ELディスプレイではなく、先代のiPad Proと同じ液晶ディスプレイではあるものの、600ニトの明るさと広色域(P3)に対応しているため、写真や映像の被写体がもつ本来の色を正しく描画することが可能だ。Appleは同ディスプレイを 「Liquid Retina ディスプレイ」 と呼んでいる。
iPad Pro (11インチモデル) | iPad Pro (12.9インチモデル) | |
---|---|---|
ディスプレイ | Liquid Retina ディスプレイ 耐指紋性撥油コーティング フルラミネーションディスプレイ 反射防止コーティング 広域色ディスプレイ(P3) True Toneディスプレイ ProMotionテクノロジー |
|
ディスプレイサイズ | 11インチ | 12.9インチ |
解像度 | 2,388 x 1,668ピクセル(264ppi) | 12.9インチ:2,732 x 2,048ピクセル(264ppi) |
これほど高い描画力を持ったiPad Proは、さまざまな場面で役に立つだろう。
たとえば、あなたが写真家や動画クリエイターだったら。iPad Proのカメラや自身の所有するカメラで撮影した写真を確認する際、色味やボケ具合など写真のディティールをしっかりとチェックできるだろう。iPad Proは処理性能もPC並みなので写真の編集もお手の物だ。
もしあなたがクリエイターでなくとも、きっとiPad Proは旅行で役に立ってくれるだろう。弘前公園(青森県)で満開の桜、東京旅行の時に超高層ビル群、沖縄で美しいビーチなどを撮影したらホテルに帰って、その日撮った美しい風景を見返したくなるのではないだろうか。そんな時にiPad Proの美しい画面があれば、旅行先で見た光景をもういちど楽しむことができるはずだ。
120Hzの高リフレッシュレート
また、iPad Proは120Hzの高いリフレッシュレートに対応している (AppleはProMotionテクノロジーと呼んでいる) 。リフレッシュレートとは 「1秒間に何回画面表示が更新されるか」 という指標のこと。この数字が高ければ高いほど画面がヌルヌルと滑らかに動く。
従来までのiPad | iPad Pro(2017) | iPad Pro(2018/2020) | |
---|---|---|---|
ProMotionテクノロジー | × | ◯ | ◯ |
リフレッシュレート | 60Hz | 120Hz | 120Hz |
この120Hzの高リフレッシュレートは他のiPadはおろか、iPhoneですら実装されていないもので、2017年以降のiPad Pro以外はいずれも60Hzのリフレッシュレートになっている。普段の操作が快適になるだけでなく、ゲームや映像を見る時にも力を発揮するだろう。Apple Pencilの書き心地も滑らかだ。
画面の点灯は指でタッチするだけ
ちなみに、iPad Proはホームボタンがなくなったこともあり、画面の点灯方法が変更されている。従来型のiPadはホームボタンを押すか、スリープ解除ボタンを押すことで画面を点灯させることができたが、ベゼルレスデザインを採用したiPad Proは画面にトンッと軽く触るだけで画面を点灯させることができるようになっている。細かいところかもしれないが、iPadは毎日触るデバイスなだけにこういった使い勝手の向上は、個人的にはとても重要だと思っている。
プロセッサ・メモリ
iPad Proは約1年半ぶりの新型モデルだが、内蔵プロセッサに関しては先代モデル(iPad Pro 2018)に採用された 「A12X Bionic」 をマイナー改良した 「A12Z Bionic」 が搭載された。同プロセッサはCPU/GPUともに8コア構成、機械学習に特化したNeural Engineも搭載されている。
果たして 「A12Z Bionic」 の実力はいかほどか。実際に 「Geekbench 5」 にてベンチマークを計測してみた。計測したのはiPad Pro(2020)とiPad Pro(2018) 、それぞれのベンチマークは以下のとおり。
iPad Pro 2020 | iPad Pro 2018 | iPad Pro 2017 | |
---|---|---|---|
コア構成 | 高性能コア×4 省電力コア×4 |
高性能コア×4 省電力コア×4 |
高性能コア×3 省電力コア×3 |
シングルコアスコア | 1123 | 1109 | 840 |
マルチコアスコア | 4686 | 4640 | 2276 |
Metalスコア | 9913 | 9180 | 6541 |
RAM容量 | 6GB | 4GB (1TBモデルは6GB) |
4GB |
上記画像をみたらおわかりいただけるように、「iPad Pro 2020 / A12Z Bionic」 は 「iPad Pro 2018 / A12X Bionic」 からほとんど性能は変わっていない。筆者の環境ではわずかにマルチコア性能が向上しているので、一応 “性能は向上した” とは言えるだろうが、劇的に処理速度が速くなるレベルではないため、iPad Pro(2018) をお持ちの方が処理性能の向上を理由に買い換える必要はあまりないだろう。
ただし、RAM(メモリ)容量については従来の4GBから6GBに増量している。この変更はおそらくマルチカメラを搭載したことが影響しているとみられるが、RAM容量の増加のおかげで写真撮影の快適さだけでなく、普段のマルチタスクや写真・映像の編集が快適になるなどあらゆる面で恩恵が受けられるようになるのではないだろうか。なかなか効果を実感できるタイミングがないので確実なことは言えないが、もし今後使っていくうちに感じたことがあったらこの点は追記したい。
ちなみにRAM容量が増えたのは、実は一部モデルだけ。2018年に発売した先代のiPad Proには1TBモデルが用意されていたが、同モデルだけ6GBのRAMが搭載されていたため、今回はそれ以下のストレージ容量を搭載したモデルだけRAM容量が増加している。
カメラ
iPad Pro(2020)が最も大きな進化を遂げた点は、カメラであると言っても過言ではないだろう。前述のとおり、iPad Pro(2020)は背面カメラがデュアルレンズカメラにアップグレードされており、これまで搭載されてきた広角レンズ(1200万画素)に加えて、新たに超広角レンズ(1000万画素)が搭載された。各レンズの仕様は以下のとおり。
広角レンズ | 超広角レンズ | |
---|---|---|
画素数 | 12MP | 10MP |
f値 | 1.8 | 2.4 |
視野角 | 不明 (仕様に記載なし) | 125° |
これまでは単眼レンズだったこともあり、背面カメラにおける撮影機能は実質的にズームのみだったが、超広角レンズが搭載されたことでもっと画角の広い写真を撮影できるようになり、表現の幅が広がった。
また、ズーム機能もしっかりと進化を遂げている。2018年モデルまでは最大5倍のデジタルズームしか利用できなかったが、2020年モデルでは2倍の光学ズームイン・ズームアウトが利用できるようになったほか、デジタルズームの倍率も最大10倍にアップしている。
その他細かい話にはなるのだが、iPad Pro(2020)の超広角レンズは 「iPhone 11/11 Pro」 に搭載されたレンズよりも視野角が5°広くなっている。さらにTrue Toneフラッシュが2018年モデルよりも明るくなったことも判明している。どちらも大きな変化ではないが、一応頭の片隅に入れておこう。
レンズの仕様についてわかったところで、ここからは検証のために筆者が撮影してきた桜の写真をお届けする。新たに追加された超広角レンズの威力はどれほどのものか、チェックしていただきたい。
広角レンズで撮影
超広角レンズで撮影
広角レンズと比べると、超広角レンズの方がどれだけ広い範囲を撮影できているかが分かるだろう。撮影テクニックをうまく駆使すれば、遠近感を強調したダイナミックな写真も撮影できるはずだ。超広角レンズは写真だけでなくビデオ撮影もできるので、ビデオ派の方もぜひご活用いただきたい。
ちなみに、TrueDepthカメラ(前面カメラ)に関しては2018年モデルから大きな変化はなし。画素数は7メガピクセルで、背景をぼかしてダイナミックな自撮りができる 「ポートレートモード/ポートレートライティング」 が利用可能だ。
LiDARスキャナ
iPad Proのカメラの進化はデュアルレンズカメラだけにとどまらない。今回から新たに 「LiDARスキャナ」 が搭載されるようになった。
このLiDARとは 「Light Detection And Ranging」 の略称。発した光が対象物に当たって跳ね返ってくるまでの時間を計測し、その対象物までの距離を正確に測ることができる技術だ。自動運転などに活用されることが多い。
iPad ProにLiDARスキャナが搭載された理由は、新しいレベルのAR(拡張現実)体験を可能にするため。これまでもAR機能を駆使したアプリは存在したが、従来のカメラでは空間認識の精度が低く、床や壁の距離や形状をきちんと認識できずARオブジェクトが宙に浮いてしまったり、現実にある家具などにかぶって表示されることも多かった。
しかしLiDARスキャナの搭載により、ARオブジェクトがリアルな位置に配置できるようになったり、障害物のうしろにARオブジェクトが隠れるよう配置させる 「オブジェクトオクルーション」 が利用可能に。従来よりもリアルなAR体験が可能になった。
一般ユーザーがAR機能を活用する機会はそう多くないと思うのだが、おそらく現時点で多くのユーザーが触れる機会が多いのは『Pokémon GO』ではないだろうか。同ゲームではiPhoneやiPadのカメラを通して現実の風景を写すと、その風景の中にあたかもポケモンたちがいるかのように表示されるAR機能が利用できるが、もしポケモンのいる世界がよりリアルに描写できるようになるのであれば、ポケモンシリーズのファンはきっと嬉しいに違いない。
ちなみに、このLiDARスキャナを使うにはアプリ側の対応が必要で、アプリ開発者にはつい先日AR用の最新フレームワーク 「ARKit 3.5」 の配布が始まったばかり。いまLiDARスキャナが搭載されたiPad Pro(2020)を購入してもまだしばらくはその恩恵を受けることができない可能性がある。
とはいえ、今秋の発売が噂されている 「iPhone 12 (仮)」 シリーズにはこのLiDARスキャナが搭載される可能性が指摘されており、LiDARスキャナに対応したアプリは今後増えていくことが予想される。今回、iPad Pro(2020)を購入して一足はやくLiDARスキャナが利用できるようになったのであれば、せっかくならAR体験できるコンテンツを探してみてはどうだろうか。
ネットワーク
iPad Proの地味ながら重要なアップデート箇所として、通信機能の改良がある。iPad Pro(2020)は、次世代のWi-Fi規格である 「Wi-Fi 6 (11ax)」 に対応している。同規格に対応する製品は、Apple製品ではiPhoneとiPad Pro(2020)のみ。iPadだけに限定すると、本製品がはじめてということになる。
Wi-Fi 6は、前規格Wi-Fi 5(802.11ac)から通信速度スループットが改善され、データ転送速度が30%向上。レイテンシは1/4となり、実質4倍以上のスピードで通信できる規格となる。また、2.4GHz帯の通信を利用できるため、障害物があっても電波が届きやすくなるなどのメリットがある。
もちろん、Wi-Fi 6を利用するには自宅の無線ルーターが同規格に対応している必要があるが、今後は同規格がスタンダードになってくるため、iPad ProがWi-Fi 6に対応することは地味ながら重要なアップデートだ。
筆者の自宅で検証してみた。先日発売したばかりのLinksysのWi-Fi 6対応ルーターを導入した自宅で通信速度を計測。結果は以下のとおりだった。
iPad Pro 2018 (Wi-Fi 5) |
iPad Pro 2020 (Wi-Fi 6) |
|
---|---|---|
下り | 294Mbps | 320Mbps |
上り | 351Mbps | 344Mbps |
検証結果から、iPad Pro(2020)の通信速度は少しばかり向上していることがわかる。Wi-Fi 6対応ルーターをお持ちの方であればきっと恩恵を受けることができるだろう。ただし、実際の通信速度の数値や改善度に関しては各々の環境によって異なると思うのため、今回の結果はあくまで参考程度に考えていただきたい。
ちなみに筆者はWi-Fiモデルを購入したが、Wi-Fi+セルラーモデルはモバイル通信を利用して通信することが可能だ。4G/LTE通信に対応し、5G(第5世代移動通信システム)には対応しなかった。
バッテリー持ち
iPad Pro(2020)は、やはり外出先で使うことが想定されたデバイス。バッテリーが充電できない場所でも性能を思う存分に発揮できなくてはいけない。
というわけで、iPad Proのバッテリー持ちを計測してみた。検証は、長時間のYouTube動画を画面の明るさ50%で垂れ流しにするというもの。実際にiPad Proで作業し続けたわけではないため、実際のバッテリー駆動とは異なる可能性があるものの、少しでも検証結果が参考になればと思う。
経過時間 | バッテリー残量 |
---|---|
計測開始 | 100% |
1:00 | 92% |
2:00 | 82% |
3:00 | 74% |
4:00 | 64% |
5:00 | 54% |
6:00 | 45% |
7:00 | 38% |
結果は上記表のとおり。1時間ごとにおおよそ8〜10%程度バッテリーが消費されたことがお分かりいただけると思う。
検証は7時間かけて行ったが、この7時間でバッテリーが切れることはなく、計算上では10時間以上バッテリーが持つ計算となる。Appleは公式の数字として10時間程度の駆動が可能としているが、今回の検証ではこの数字に偽りがないことが実証された。
iPadOSの進化でiPad ProはよりPCライクに
①トラックパッドやマウスで操作できるように
iPad Proはハードウェアのアップデートだけでなく、ソフトウェアのアップデートによって使い勝手が大きく向上している。
まずはマウスとトラックパッドのサポート。iPad ProにBluetooth経由でMagic Trackpad 2やMagic Mouseなどを接続できるようになっていて、これらのポインティングデバイスを使ってiPadを操作できるようになった。
デバイスを接続するとマウスカーソルがiPadの画面に出現し、あとは画面をタッチすることなく操作できるようになる。
その姿はまるでMacのよう。しかもトラックパッドはMacとおなじMulti-Touchジェスチャも利用できるため、これまで以上のスピード感でiPadを操作できるようになっている。こんな便利なiPad、誰が想像していただろうか。
ちなみに、AppleはiPad Pro向けMagic Keyboardを5月に発売する予定だ。このMagic Keyboardにはトラックパッドが内蔵されているため、本当にMacのように使用することが可能になる。もしかすると 「iPad Pro(2020)本体よりもMagic Keyboardの方が楽しみ」 という方も多いのではないだろうか。
実は筆者もそのひとり。筆者は普段から外出する際、ほぼ確実に13インチMacBook Proを持って歩くが、もしMagic KeyboardとiPad Proの組み合わせが便利なら、MacBook Proを持ち出す機会は減る可能性がある。
②キーボード接続時にライブ変換が利用できるように
さらにマウスとトラックパッドのサポートのほかにも、Magic Keyboardなどのハードウェアキーボードを接続した時にライブ変換が利用できるようになるといった変化も起きている。
ライブ変換とは、キーボードで入力した文字が自動的に最適な形に変換されていく機能。
例えば 「今日朝ごはんはオムライスでした。」 と入力するとき、これまではまずひらがなですべて入力して、そのあとで 「今日」 「朝ごはん」 というように一単語ずつカタカナや漢字に変換する必要があったが、ライブ変換では単語を入力するごとに適宜変換されていくため、「今日朝ごはんはオムライスでした。」 という”文章”でも手動で変換する必要がなく、いままでよりスムーズに文字入力できる。
同機能はこれまでMacでのみ利用できたが、いよいよiPadでも利用できるように。文章を打つ筆者のような仕事には最重要機能と言っても過言ではないだろう。前述のiPad Pro用のMagic Keyboardとの相性も良さそうだ。
上記はいずれも旧型iPadでも利用できるため、どちらかというと新型iPad Proの機能というよりiOS 13.4の機能と言った方が正しいわけだが、とはいえこれらのサポートのおかげでiPadは従来とはまったく違う使い方ができるように。iPadが活躍する機会も大きく増すことになるだろう。
Q&Aコーナー ~iPad Proでできること~
新型iPad Proの特徴についてはそれなりに理解していただけたと思うので、ここからは読者の皆さんからいただくことが多い質問についてQ&A方式でお答えしていく。iPad Proの使い方のヒントになるかもしれないので、ぜひ皆さんに読んでいただきたい。
Q. 有線イヤホンが使いたいんだけど、イヤホン端子ってある?
A. iPad Pro(2020)には3.5mmイヤホンジャックが搭載されていないので、USB Type-C接続以外の有線イヤホンを直接挿して使うことはできません。有線イヤホンを使いたい場合は、USB Type-C接続のイヤホンかあるいはApple公式サイトで販売されている 「USB-C – 3.5 mmヘッドフォンジャックアダプタ(税別1,000円)」 を使う必要があります。
Q. USB Type-Cコネクタで映像出力ってできる?
A. 可能です。「LG UltraFine 5K Display」 などのUSB Type-Cポートを搭載した外部ディスプレイにケーブル1本で映像を出力することができます。また、HDMI/VGAディスプレイに映像を出力することも可能ですが、その際は 「USB-C Digital AV Multiportアダプタ(税別6,800円)」 や 「USB-C VGA Multiportアダプタ(税別6,800円)」 もしくはサードパーティ製のアクセサリーなどを使ってUSB-Cポートを拡張する必要があります。ディスプレイと接続するための各種ケーブルもお忘れなく。
Q. USB-Cコネクタが1個しかないのがツライ。どうにか拡張したい!
A. iPad Proに対応したサードパーティ製のUSB-Cハブが多数販売されています。3.5mmイヤホンジャックやSDカードリーダー、USB-A端子やHDMIポート、さらにはパススルー充電可能なUSB-Cポートなど様々なポートが搭載されたものもあるので、自分が欲しい端子が搭載されたものを購入してみてください。ちなみに一部のデジタルカメラやSDカードをiPadに接続することで、iPadに対して直接写真を送ることもできます。
Q. iPad ProをMacのサブディスプレイとして使える?
A. iPadOS 13以降をインストールしたiPad ProとmacOS Catalina 10.15以降をインストールしたMacを使えば、「サイドカー」 機能でiPad Proをサブディスプレイとして使うことができます。接続中にApple Pencilを使うこともできるので、Adobe Illustratorなどの対応アプリを使えばiPad Proをペンタブレット代わりに使うこともできます。
Q. iPad Proはお絵かきデバイス(液晶ペンタブレット)になってくれる?
A. 筆者はお絵かき用途でiPad Proを使うことが少ないのですが、以前プロのイラストレーターの方にiPad Proを使ってお絵かきをしてもらったところ、液晶ペンタブレットよりも使いやすい印象だとお話してくれました。ただ、iPad Proのディスプレイは表面がツルツルしていて少し描きづらいので、ペーパーライクの液晶フィルムを使うと快適かもしれないとのことです。詳しくは 「Apple Pencil(第2世代)」 のレビューをどうぞ。
Q. Apple Payは使えるの?
A. iPhoneのようにお店や改札で使うことはできませんが、アプリやSafari、ビジネスチャット上では使えます。日本ではまだ利用できませんが、Apple Cash(個人間送金機能)でも使えます。
Q. Wordとか表計算ソフトが使いたい。
A. Microsoftの 「Word」 はiPad向けにアプリが用意されています。また、Apple純正アプリの 「Numbers」 も表計算ソフトですよ。「Numbers」 についてはiPad Pro購入者は無料で利用することができます。ぜひ好きな方をお使いください。
Q. 「ホーム」 アプリは使える?
A. もちろんです。iPhoneやMacの 「ホーム」 アプリと同じように使えます。HomePodの再生・コントロールもできます。HomeKit対応デバイスを管理することも可能です。
Q. iPad Proはワイヤレス充電できるの?
A. 残念ですがiPad Proではワイヤレス充電は利用できません。現時点でワイヤレス充電に対応しているApple製品はiPhoneとApple WatchとAirPods/AirPods Proのみです。
なぜ11インチモデルを購入するのか。魅力はどこに?
筆者は11インチiPad Proのファンだ。前述したとおり、iPad Proには11インチモデルと12.9インチモデルの2種類が用意されているが、2018年に発売した先代のiPad Proも、そして今回の新型モデルも11インチモデルを購入している。
なぜ筆者は11インチモデルを選ぶのか。その答えは持ち運びのしやすさにある。
そもそも11インチモデルと12.9インチモデルの違いは画面の大きさくらいしかない。画面が広いとそれだけ多くの情報を表示することができるが、一方で本体サイズが大きくなったり、より大きなバッテリーを搭載するため本体重量が重くなるというデメリットもある。
12.9インチモデルの重量は641g (Wi-Fi+セルラーモデルは643g)。決して持ち運びできない重量ではないものの、外出先で12.9インチのiPad Proを持ち運ぶなら、いっそのことMacBook Pro 13インチモデルを持ち運んだほうがいい。なんだかんだ言ってMacの方ができることが多いからだ。
そういう意味では、どれだけiPad用のMagic Keyboardが便利だったとしても、筆者にとってiPad ProがiPhoneとMacBook Proの中間の存在であることに今後も変わりはなく、12.9インチモデルよりも11インチモデルの方が活躍の機会が多いことになる。
また、筆者は仕事柄ゆえに11インチiPad Proが最も相性が良い。記者発表会など狭い環境下でタイプする機会が多いため、コンパクトなiPad ProとMagic Keyboardの組み合わせは便利そうとしか思えない。ある意味、iPad ProがまるでMacのように使えるようになった今回の変化は、筆者にとって過去最も重要なものだったと言えるだろう。
上記はあくまで筆者の個人的な好みや使い方によるものなので参考になるかどうかはわからないが、もし筆者と似たような用途でiPad Proを購入するなら、11インチモデルがオススメだ。
ただし、あえて悩ませるようなことを言って申し訳ないのだが、自宅で据え置きで使うことを想定しているのであれば12.9インチの大画面モデルも捨てがたいものだ。どちらのモデルが最適かについては各々の使い方によって変わってくるはず。ぜひじっくりと考えてみていただきたい。
まとめ
今回、大ボリュームでiPad Pro(2020)のレビューをお伝えしたが、果たしてあなたの目にはどう映っただろうか。
様々な検証の末に辿り着いた筆者の考えは、iPad Pro(2020)は先代モデルと同じく素晴らしい出来映えであったということ。
欲を言えば、1年半ぶりのアップデートということもあったため、出来ればもっと性能の高いプロセッサを搭載して欲しかった気もするが、ただしベンチマークスコアをご覧になればお分かりいただけるようにタブレットとしてはとても性能の高いものになっているため、現状でも十分に満足できる。
その上で、筆者は5月に発売予定のMagic Keyboardの登場がとても待ち遠しい。これまではMacBook ProあるいはMacBook Airが外出時のパートナーだったが、今後はこの中にiPad Proが加わる可能性が高い。もちろん、これはMagic Keyboardがどれほど便利なのかにかかっているわけだが、実は内心かなりの期待をしている。
そして最後の結論。iPad Pro(2020)は買いなのか、ということ。
もし2018年モデルのiPad Proをすでにお持ちなら、今回のiPad Pro(2020)に買い替える意味は正直なところ皆無と言える。カメラ部以外にデザインの変更もなく、性能もそこまで大きく向上していないマイナーアップデートモデルであるため、2020年後半以降に発売する次期モデルの登場を待ってもいいのではないだろうか。
ただし、もしあなたが数年ぶりにiPadを購入しようと考えているなら、今回のiPad Pro(2020)は十分にオススメできる。導入することであなたの生活をきっと数段上に押し上げてくれるだろう。
場合によってはiPad向けMagic Keyboardの購入を前提に、Macからの買い替えも考えてもいいのかもしれない。いずれiOSのアプリとMacのアプリは統合される計画なので、Macでしかできないことも少なくなってくるだろう。
もし、iPad Proのさらなる詳細が気になるのであれば、Apple公式サイトで改めてiPad Proの詳細をチェックしてみていただきたい。Apple公式サイトでは他のiPadとも性能を比較できるため、購入前にぜひ一度チェックしてみてはどうだろうか。
ちなみに、第3の選択肢として今回初めて搭載されたデュアルレンズカメラやLiDARスキャナが不要という方は、ほとんど性能的に大差がないiPad Pro(2018)を購入するという手もある。
iPad ProはApple公式サイトではすでに販売が終了しているが、代わりにApple整備済製品ストアで整備済品が販売されている。Apple整備済製品ストアで購入すれば15%程度安く買えるため、背面カメラにこだわりのない方はそちらで購入してみてはどうだろうか。
参考情報として、Apple整備済製品ストアにおける11インチiPad Pro(2018)は57,800円(税別)から、12.9インチモデルは65,800円(税別)から購入することが可能だ。
Apple整備済製品ストアは在庫が常にあるわけではないが定期的に在庫が復活するので、たまに在庫チェックをすることをオススメする。また、当サイトではApple整備済製品の追加情報を速報でお伝えしているため、良かったら当サイトの更新をチェックしていただくか、Twitterアカウントをフォローいただきたい。あなたにとって最もベストな形でiPadが購入できますように。
東北出身の東京都在住(性別年齢は非公開)。趣味はガジェットいじり、旅行や料理、映画、ゲーム。イモリやサンショウウオが好きなので、家でよく愛でています。
同メディアで取り扱う情報は主にインターネットテクノロジー関連、AppleやGoogleなどの新製品やサービス。その他、今最も興味があるのは「VR/AR」「スマートスピーカー」。