「Xbox Adaptive Controller」 が取り除くゲームプレイの障壁。Microsoftのアクセシビリティに対する取組み

昨年1月、Microsoftは 「Xbox Adaptive Controller」 というコントローラーを発売した。

同製品は、障碍のある人の負担を軽減するために開発された特殊なゲームコントローラー。すべての人が自身のアクセスしたいものにアクセスできることを目標とした “アクセシビリティ” の考えに基づいて開発された。

このたび、日本マイクロソフトが同コントローラーを紹介するとともに、同社のアクセシビリティに関する取り組みを一部メディア向けに報告した。世界で10億人いるとされる、アクセシビリティが必要な人たちに対して、Microsoftおよび日本マイクロソフトがどんな取り組みを行っているのか、その一端を当記事ではご紹介したい。

障碍をもつユーザーに向けて開発されたXboxコントローラー 「Xbox Adaptive Controller」

まずは、改めて 「Xbox Adaptive Controller」 のご紹介。前述のとおり、同コントローラーは障碍をもつユーザーに向けて開発されたXboxコントローラー。大きなプログラマブルボタンに加えて、別売りの外付けボタン、スティックを繋ぐことができる。

”障碍” といっても視覚、聴覚、神経系、メンタルヘルスなどさまざまな障碍があるわけだが、同コントローラーは主にモビリティ (身体を巧みに動かすことのできるかどうか) に関する障碍をもつユーザーに向けた製品となっている。

顎を使ってジョイスティックを操作している様子

Microsoftによると 「Xbox Adaptive Controller」 は “インクルーシブデザイン” を採用した製品であるという。“インクルーシブデザイン” とは障碍のあるユーザーから得たフィードバックをもとに、すべてのユーザーがアクセスできることを目標にしたアプローチ、あるいは製品デザイン。

Microsoftはすべてユーザーがゲームを楽しむことができるように、排他的要素を認識することから始まり、多様性から常に学び続け、そして一人のためが多くの人の解決になるという考え方のもと、デザイン・開発を行っている。

実際、障碍をもつユーザーにとって、これまでのゲームコントローラーはゲームプレイにおいて障壁となり得る物であったことが分かったそう。「Xbox Adaptive Controller」 はそういった障壁を解決し、ゲームプレイヤーの負担を解消あるいは軽減することができているという。

北海道医療センター 作業療法士 田中栄一さんと吉成健太朗さん

今回の報告では、独立行政法人 国立病院機構 北海道医療センターの神経筋/成育センターで作業療法士として勤務する田中栄一さんと、Xbox Adaptive Controller 紹介ビデオ制作プロジェクトを統括する吉成健太朗さんの活動が紹介された。

田中さんによると、現在100名程度の患者さんが同センターに入院しており、その7〜8割の方が携帯電話やPC・コンソールを使ってゲームをプレイしているとのこと。ゲームはその方たちのリハビリテーションとして活用できるだけでなく、患者さん同士のコミュニケーションやネットワークを介して病院外の世界とのコミュニケーションの場となっているという。

特に筋ジストロフィーなど神経筋疾患を患う人たちにとっては屋外でスポーツをしたりするのは難しい。ゲームであれば患者さん同士、あるいは世界のゲームプレイヤーと一緒に競い合ったり、同じ世界で一緒に冒険したりできる。

「Xbox Adaptive Controller」 が登場するまではコントローラーを改造したりして、患者さんがゲームプレイできるよう工夫する必要もあったという。しかし、同コントローラーが登場したことで、誰もが手軽にゲームを楽しむことができるようになったとする。

「Xbox Adaptive Controller」 は日本を含む世界33カ国で販売されている。まだ全世界のユーザーが利用できる状態ではないかもしれないが、おそらく同コントローラーの登場によって、ゲームにアクセスできるようになった人は一定数いたのではないだろうか。

日本マイクロソフトは 「Xbox Adaptive Controller」 の紹介ビデオを公式YouTubeチャンネルにて公開している。この動画は、自身も脊髄性筋萎縮症(SMA)を患いながらビデオの制作・編集を行っている吉成健太朗さんを中心に、国立病院機構 北海道医療センターのプロジェクトチームが制作したものであるとのこと。

公開されたビデオでは、Xbox Adaptive Controller の紹介から、障碍のある方の目線を通じてどのように自分がプレイするために何の準備をしたらいいのか、気を付けるポイントはどういった点なのかをわかりやすくまとめている。

ゲームプレイをしてみたいと考えている多くの障碍のある人に向けて、具体的に自分の身体の部位がどう動くことをチェックしたらよいのか、その動きをどのようにゲームのプレイに活かせるのか、細かく実践する姿を見ることができる。長時間同じ姿勢になってしまうことの注意点や、ゲームごとに使うボタンの数が異なるため、体と操作に合わせた確認することがプレイするための準備として重要であるとビデオでは伝えている。

動画制作にあたり、日本マイクロソフトと田中さんや入院する患者さんで構成されるプロジェクトメンバーはビデオ制作の打ち合わせ、ビデオのストーリーや内容の確認を細かに行ったという。昨今の新型コロナウイルス事情から東京から担当者を派遣することができなかったため、Microsoft Teamsのオンライン会議によって打ち合わせを行った。

また、この動画をより多くの人に視聴してもらうため、Microsoft Translatorを活用し、英語字幕も付与した。

「障碍があると、普通のスポーツを皆さんと同じようにプレイすることはできません。でも、ゲームの世界であればだれでも同じ条件でプレイすることが出来ます。そういったことが多くの人にまだまだ知られていないと感じています。僕と同じような障碍がある人には、こういう形で楽しめるスポーツがあるということを知ってもらいたい。障碍が無い人には、障碍があっても皆さんと同じようにプレイを楽しむことが出来るということ、それをこのビデオを通じて伝えられたらと考えています。」

田中さんは、今後挑戦したいことがさらに増えたと言う。

「今はこの北海道から、全国の人とつながることが出来るようになっています。また、これまで Xbox でプレイしたことがなかった患者さんも、Xbox Adaptive Controller を通じて新しいゲームに挑戦してみる人が増えてきました。これからは、ゲームの対戦などを通じて日本全国だけでなく、世界中の人とつながっていきたいです。」

「Xbox Adaptive Controller」 は、まさにすべてのゲームプレイヤーを繋ぐ架け橋のようなもの。誰もが当たり前にゲームができるように開発された同コントローラーの登場を待ちわびていた人たちがいたことを、私たちはぜひ知っておくべきだろう。

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AuthorNANA

東北出身の東京都在住(性別年齢は非公開)。趣味はガジェットいじり、旅行や料理、映画、ゲーム。イモリやサンショウウオが好きなので、家でよく愛でています。

同メディアで取り扱う情報は主にインターネットテクノロジー関連、AppleやGoogleなどの新製品やサービス。その他、今最も興味があるのは「VR/AR」「スマートスピーカー」。